行介はきぬ子との間に出来た男の子(実の子どもではないのではと悩んでいたが・・・)を里子に出すことにしました。 行介もさすがに残り惜しいような気がしないでもないが、しかしこれで駿(すすむ)の片がつけば、彼は本当に身軽になれるばかりでなく、十分勉強も出来ると思った。彼は一生小学校の教員で終わりたくなかった。せめて中等教員の免状ぐらいは取っておきたかった。その素養を土台にして、彼はもっと先の研究もしたかった。で、今まででも僅かな時間と費用とを割いて、こつこつと勉強していたのだった。今度、駿の里扶持の金が浮けば、夜学にも通えると彼は思った。(「子」一の十五)(中略) しかし中等教員検定試験の日が近づい…