それはどこから湧いて、どこへ向かうのか… フェティシズムという言葉を知ったのは、果たして何時のことであっただろうか。ませた友人(故人)が、「お前、澁澤を知らないのかよ」と投げつけてきた蔑みの言葉を受けて、近くの図書館で一番痛んでいる、すなわち一番読まれていると推測できる澁澤龍彦のエッセイを1冊、借りたタイミングであったことだけは覚えている。 今でこそ、『マツコの知らない世界』などのヒットによって、本来のフェティシズムという言葉が指し示す呪物崇拝や、その後主流となった性的偏愛傾向という意味を超え、偏執狂的な傾向全般を指す用語として使われるまでに一般化しているが、インターネットすらない当時は、アン…