「水野です」 中野駅近くのルノアールに現れた久保さんはそう言った。 「こんにちは」セーラー服を身にまとい、原稿入れのケースを抱えた私はじゃっかん緊張しながら挨拶した。 初対面の人と喫茶店で待ち合わせするということ自体、生まれて初めてだったかもしれない。 水野さんは中肉中背の、いわゆる完全な中年男だった。ただし属性的に、「やや闇に近いところにいる中年のおじさん」に見えた。ゴテっとしたボストンタイプの重い茶色の度付きサングラスが、水野さんの闇度を高めていた。 ルノアールで私は、抱えてきたケースから、適当に集めてきた自分の原稿を取り出して、水野さんに見てもらった。 原稿といっても投稿用漫画原稿など一…