さみだれはたきふりうづむみかさかな 元禄2年(1689)4月29日の作か。芭蕉は、須賀川を発つ日は快晴であり、近くの玉村龍崎にある乙字ヶ滝(古くは石河の滝とも)に立ち寄ったと『曾良随行日記』に記されている。那須連峰に源を発す阿武隈川は龍崎あたりで滝となる。その手前で川筋が大きく湾曲して「乙」の形をなすことから乙字ヶ滝と名付けられたという。滝の落差は数メートルほどだが、幅は280mほどまで広がっており壮観である。芭蕉が訪れた際は、五月雨による増水により、却って水かさが増して滝が埋められてしまったように見えたのであろう。 ちなみに、河畔にある「滝見不動堂」の傍らには、芭蕉の句碑が建っており、「五月…