春の季語に「亀鳴く」というのがあります。 どの歳時記を見ても、 鎌倉後期の延慶3(1310)年頃に成立した 類題和歌集『夫木和歌抄』に収められた 藤原為家の和歌がもとになって 生れた季語だとしています。 川越の をちの田中の 夕闇に 何ぞと聞けば 亀のなくなり [意訳] 川向こうの、あの田んぼの中で 何かの鳴き声が聞こえる。 あれは何かと尋ねたら 亀が鳴いているのだ。 実際には、亀が鳴くことはありません! 声帯など声を出す器官を持っていないので、 「鳴きたくても鳴けない」のです。 ですが、古来より亀は、春の恋の季節になると オス亀がメス亀を鳴き声で呼ぶと言われて きました。 また「亀の看経」(…