京都の書店には「京都本」コーナーがある。それでまた、けっこう品ぞろえが多いのだ。「京都本大賞」というのもあって、それなりに定着してきた感がある。ちなみに、自分の中では『有頂天家族』が最高の京都本なんですけど。 この「京都本」というジャンルだが、個人的にはあまり好きではなくて、無理に京都を舞台にすることで、やたらと人工的ないやらしい仕上がりになってしまった失敗作にもときどき出会う。このあいだ読んだのはひどかった。京都人がよそ者の主人公をねちねちいじめる設定が最悪だった。 それで、あまりの後味の悪さに、口直しにと思ってきれいな桜の表紙の文庫本を手にした。まぁこれもベタな京都本なんだろな、と読んでみ…