唐人お吉:井上友一郎 1949年(昭24)11月~1950年(昭25)雑誌「改造文藝」連載。 1952年(昭27)講談社刊。講談社評判小説全集 第10巻所収。 唐人お吉:井上友一郎2 幕末の動乱期に、下田に開設された米国総領事ハリスのもとに妾として通った唐人お吉の波乱の生涯を描く。唐人という呼び名は、鎖国が続いた江戸時代の庶民たちにとって、あらゆる異邦人に対するもので、彼らに身体を売る行為は奇異な目でさげすまれた。お吉自身にとっても好んでそうしたわけではなく、半ば国難を救うためという大義名分と、恋人に棄てられた自暴自棄からと作者は語る。お吉はまだ若い、気骨のある芸妓で評判だったが、憂さ晴らしに…