「仏果を得ず」(三浦しをん、双葉社)は日本の伝統芸能・文楽の世界で、芸に命をかける青年の物語です。といっても、カタイ話ばかりではありません。なにしろこの青年、知人が経営するラブホテルの一室を格安で借り切って、アパート代わりにしているくらいだから。 えっ、ぶんらく・文楽?。歌舞伎なら、なんとなくイメージあるけど...。 ところが読み始めると面白く、つい本を置いて文楽についてネットで調べ上げ、再び本を手にして読み終えたころには、表も裏も知り尽くして<通>になった気がします。気だけですが。 三浦さん、あまり知られていない世界を取り上げて、魅力的な作品に仕立てるのがうまい。「舟を編む」は国語辞典の編集…