川村 ちゃんと戻ります(笑)。というのも、常に戻るために書いているところもあって、そこは旅のスタイルにも通じているんです。僕は10代の頃に沢木さんの『深夜特急』を読んでわかりやすく香港から旅を始めた人間で、いまだに1年に一度はバックパッカーとして一人旅に出るんですが、それは今の日本、映画界にいる自分は何者なのかを外から発見するために行っている感じです。(川村元気『仕事。』集英社、2014) こんばんは。今日は川村さんと沢木耕太郎さんの対談より。上記の「戻るために書く」っていうのは、どこか村上春樹さんの処女作にある《文章を書くことは自己療養の手段ではなく、自己療養へのささやかな試みにしか過ぎない…