397.『道草』番外編(3)――長谷川如是閑『初めて逢った漱石君』 田岡嶺雲と共にもう1人、少し年下だが漱石の同時代人として長谷川如是閑を取り上げたい。 長谷川如是閑は明治大正、そして昭和の戦前戦後に亘って、「ジャーナリスト」であり続けた珍しい人物である。ジャーナリストは権力とその腐敗した部位を人々の前に明らかにして、個人としてそれと闘うことが職務である。といってことさらジャーナリストは自称するものでもないだろう。自称・吹聴する前に本人が常態として世俗(権力)と対峙していなければならない。愛のために世俗と対峙する人のことを仮に小説家と呼ぶとすれば、言論でそれを行なう人のことを、周りがジャーナリ…