琴の音に ひきとめらるる 綱手縄《つなてなは》 たゆたふ心 君知るらめや 〜琴の音に引き止められた綱手縄のように ゆらゆら揺れているわたしの心をお分かりでしょうか 【第12帖 須磨 すま】 五節《ごせち》の君は 人に隠れて源氏へ手紙を送った。 琴の音に ひきとめらるる 綱手縄《つなてなは》 たゆたふ心 君知るらめや 音楽の横好きをお笑いくださいますな。 と書かれてあるのを、 源氏は微笑しながらながめていた。 若い娘のきまり悪そうなところのよく出ている手紙である。 心ありて ひくての綱の たゆたはば 打ち過ぎましや 須磨の浦波 漁村の海人《あま》になってしまうとは思わなかったことです。 これは源…