【タコ部屋の飯を食った作家佐左木俊郎(つづき)】 文芸誌『新潮』の編集に携わった楢崎勤(1901−78)に『作家の舞台裏:一編集者のみた昭和文壇史』(読売新聞社、1970)がある。そこに、小林多喜二の作品『蟹工船』『不在地主』についての佐左木俊郎の評価が記録されている。 そして、《佐左木は、ある時期、土工となって「監獄部屋」同然の飯場生活をつぶさに体験している》と楢崎は書いている。楢崎は新潮社で佐左木と同僚。ということは、監獄部屋=タコ部屋同然の飯場生活を体験したというのは、佐左木からの直話と解してもいいだろう。 ではいつ、どこでなのか? 前回にあげた和田芳恵の『ひとつの文壇史』では「北海道の…