興味深い証言がある。 伊藤博文に関してだ。 前回から引き続き、佐藤紅緑の追憶より少し引く。 「日露戦争の熄む少し前、公に愛されてゐた或芸者から聞いたことだが、世間では伊藤公といへば非常な好色家のやうに思ふけれども、聞いて見ると必ずしもさうでない。なるほど伊藤さんはよく飲みよく遊んだ。そしてお茶屋へ泊り込む時は、枕元へ芸者を坐らせて、三味線を爪弾きさせる。それを聞きながらウトウト眠るんだね。芸者は、公が眠ったなと思ったら、目が覚めないやうにソーッと部屋を出てしまふと云ふんだ。つまり独りで眠るのが寂しいらしい」 親近感を覚えずにはいられない。 なんとなれば筆者(わたし)自身の父親も、よく枕元にラジ…