「便なしと思ふべけれど、 今一度、かの亡骸を見ざらむが、 いといぶせかるべきを、馬にてものせむ」 とのたまふを、いとたいだいしきこととは思へど、 「さ思されむは、いかがせむ。 はや、おはしまして、 夜更けぬ先に帰らせおはしませ」 と申せば、 このごろの御やつれにまうけたまへる、 狩の御装束着替へなどして出でたまふ。 御心地かきくらし、 いみじく堪へがたければ、 かくあやしき道に出で立ちても、 危かりし物懲りに、 いかにせむと思しわづらへど、 なほ悲しさのやる方なく、 「ただ今の骸を見では、 またいつの世にかありし容貌をも見む」 と、思し念じて、 例の大夫、 随身を具して出でたまふ。 道遠くおぼ…