大澤綯子『「修養」の日本近代:自分磨きの150年をたどる』(NHK出版、令和4年8月)の第3章は「働く青年と処世術ー新渡戸稲造と『実業之日本』」。新渡戸の『一日一言』(実業之日本社、大正4年1月)への言及がある。 毎日決めたことはどんなに小さいことでもいいから必ず実効するとか、寝る前に五分でもいいから一日を省みて瞑想するといった、少し心がければ誰でもできそうな実践法を説き、その日その日の教訓や格言をまとめた『一日一言』も出版された。ここで圧倒的に多く引用されたのは日本人だった。伊藤仁斎に熊沢蕃山、一休和尚に沢庵和尚、北条時頼に伊達政宗、明治天皇に昭憲皇太后のことばや和歌まで並ぶ。イエスをはじめ…