頭の形と、髪のかかりぐあいだけは、 平生美人だと思っている人にもあまり劣っていないようで、 裾《すそ》が袿《うちぎ》の裾をいっぱいにした余りが まだ一尺くらいも外へはずれていた。 その女王の服装までも言うのはあまりにはしたないようではあるが、 昔の小説にも女の着ている物のことは 真先《まっさき》に語られるものであるから書いてもよいかと思う。 桃色の変色してしまったのを重ねた上に、 何色かの真黒《まっくろ》に見える袿《うちぎ》、 黒貂《ふるき》の毛の香のする皮衣を着ていた。 毛皮は古風な貴族らしい着用品ではあるが、 若い女に似合うはずのものでなく、ただ目だって異様だった。 しかしながらこの服装で…