カエデ 『一握の砂』東雲堂版 煙 一 (P.98) 茨島の松の並木の街道を われと行きし少女 才をたのみき 眼を病みて黒き眼鏡をかけし頃 その頃よ 一人泣くを覚えし <ルビ>茨島=ばらじま。少女=をとめ。 (P.99) わがこころ けふもひそかに泣かむとす 友みな己が道をあゆめり 先んじて恋のあまさと かなしさを知りし我なり 先んじて老ゆ <ルビ>己=おの。 《つぶやき》 啄木の生涯をおもうとき「先んじて恋のあまさと かなしさを」、確かに啄木は知ったのではないか。 1886年(明治19)2月20日、啄木誕生。 1899年(明治32)、啄木13歳のとき節子と知り合う。 1904年(明治37)2月…