「JR上野駅公園口」(柳美里=ゆう・みり=、河出文庫)は、2020年に全米図書賞を受賞したことで、日本でも多くの人が手に取った1冊です。わたしもその一人で、柳美里さんの作品は初読でした。 いい作品が必ずしも売れると限らない以上、どんな経緯を経るにしても、多くの読者を獲得することは素晴らしい。それにしてもどこか複雑な気持ちを拭えないのは、日本人ではない英語圏の人がこの小説に注目し、翻訳し、アメリカで権威ある賞を受賞したということ。 書かれているのは、極めて日本的な歴史現実と一人のホームレスの心象です。何より日本に暮らす人が向き合うべきテーマが小説空間に詰まっていて、それをアメリカに教えてもらった…