君も、 「かくうらなくたゆめてはひ隠れなば、 いづこをはかりとか、 我も尋ねむ。 かりそめの隠れ処と、 はた見ゆめれば、 いづ方にもいづ方にも、 移ろひゆかむ日を、いつとも知らじ」 と思すに、 追ひまどはして、 なのめに思ひなしつべくは、 ただかばかりのすさびにても過ぎぬべきことを、 さらにさて過ぐしてむと思されず。 人目を思して、 隔ておきたまふ夜な夜ななどは、 いと忍びがたく、 苦しきまでおぼえたまへば、 「なほ誰れとなくて二条院に迎へてむ。 もし聞こえありて便なかるべきことなりとも、 さるべきにこそは。 我が心ながら、 いとかく人にしむことはなきを、 いかなる契りにかはありけむ」 など思…