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公田耕一

(読書)
くでんこういち

2008年12月8日朝日歌壇(朝日新聞月曜朝刊の歌壇コーナー)に初投稿で初入選。

「(柔らかい時計)を持ちて炊き出しのカレーの列に二時間並ぶ」

以来常連投稿者となり、話題となったホームレス歌人。
4人の選者のうち佐佐木幸綱、永田和宏両氏が「真に迫る、知的な歌」と注目した。
投稿には「住所明記」の規定があるが、「住所という存在証明を持たないホームレスという立場は実際にある。排除すべきではない」と、選者の考えが一致した。住所表記は(ホームレス)にすることになった。
横浜市寿町付近でホームレスをしていたと言われている。

入選歌
12/22「鍵持たぬ生活に慣れ年を越す今さら何を脱ぎ棄(す)てたのか」
1/5 「パンのみで生きるにあらず配給のパンのみみにて一日生きる」
1/19 「日産をリストラになり流れ来たるブラジル人と隣りて眠る」
1/26 親不孝通りと言へど親もなく親にもなれずただ立ち尽くす」(3氏が選出)
 
2月には「朝日新聞」社会面で「ぜひ連絡をとりたい」という編集部の呼びかけの記事が掲載された。

本人からの投稿葉書には、丁寧な字で「皆様の御厚意本当に、ありがたく思います。が、連絡をとる勇気は、今の私には、ありません。誠に、すみません。(寿町は、東京の山谷・大阪の釜ケ崎と並ぶ、ドヤ街です。)」という添え書きがあった。

「ホームレス歌人の記事を他人事のやうに読めども涙零しぬ」
「胸を病み医療保護受けドヤ街の柩(ひつぎ)のやうな一室に居る」

体調が良くない様子が描かれている。

「ホームレス襲撃事件と派遣村並ぶ紙面に缶珈琲零す」
「美しき星座の下眠りゆくグレコの唄を聴くは幻」
「七分の至福の時間寒き日はコイン・シャワーを一身に浴ぶ」
「百均の「赤いきつね」と迷ひつつ月曜だけ買ふ朝日新聞」
「温かき缶コーヒーを抱きて寝て覚めれば冷えしコーヒー啜る」

1年も経たぬ内に投稿がぱったりと途絶えた。
死亡説等が飛び交い、安否を心配されたが、
連絡がつかず、真偽は謎のままである。

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