岩波文庫161ページ「あるいはいふ、ただ人道のみに諸仏出世す、さらに余方余道には出現せずとおもへり。いふがごとくならば、仏在のところ、みな人道なるべきか。これは人仏の唯我独尊の道得なり。さらに天仏もあるべし、仏々もあるべきなり。諸仏は唯人間(じんかん)のみに出現すといはんは、仏祖の閫奥(こんおう:奥の間)にいらざるなり。」 あるいは次のように言う者がいる。人間界にのみ諸仏が現れる、人間界のほかには諸仏は現れない。そう思っている。もしそういうことなのであれば、仏が存在するところはすべて人間の世界なのか。このようなことを言うことは、人間の世界の仏だけを尊いものとする言葉である。人間界のほかに、天上…