森の奥深くに 「あった!」 薄暗い森のなか、わたしは満面の笑顔で声をあげた。思わず指さした先にある建物が、予想にたがわず、小さくて華奢だったからだ。それはまるで、絵本にでてくる魔法使いの老婆が住んでいる小屋のように、静かにたたずんでいた。ほかには誰もいない土の道を、入り口に向かって歩いていく。波の音が聞こえていた。かすかに、潮の香りが運ばれてくる…。 長崎県平戸市にある「切支丹資料館」は、この地方の潜伏キリシタンの歴史的遺物を展示し、禁教令のもと、いちずにキリスト教の信仰をつらぬこうとした彼等の受難や、その後の信仰の変容過程を紹介している。時の流れのうちに、マリヤ像は着物を着たふくよかな顔のマ…