潮風が頬を撫でる港町に降り立ったのは、冬だった。食と酒とをテーマにした自分なりの旅を続けていた。土地ごとの料理を味わい、その地の酒を口にし、身体にどう響くかを確かめる。それはただの観光ではなく、心と体を整える旅だった。 最初に訪れた居酒屋は、木の温もりが漂う小さな店。女将が差し出したのは、地元の米で仕込んだ純米酒。透明な酒を含むと、米の甘みがふわりと広がり、喉をすべるように消えていく。添えられた料理は、旬の野菜を蒸しただけの素朴な一皿。塩も控えめで、素材の力をそのまま味わう。派手さはないが、身体にすっと馴染む感覚が心地よかった。 翌朝、港を歩くと漁師が朝獲れの魚を並べていた。私は鯖を選び、宿の…