エリヤは崖下から吹き上げてくる潮風に身をゆだねていた。 アレク湾の向こうには弧を描いて水平線が広がっていた。 彼が見つめる先の海と空の狭間は、ゆっくりと夜の幕を閉じた。 すると、幼子の頬を滑るようにして、 昼の女王がしずしずと 沢山の侍女を引き連れて上ってきた。エリヤの顔も服もその光に一瞬包み込まれ、 それから穏やかないつもの景色に変わっていった。 しかし彼のうちには そのエネルギーが凝縮して、燃えたぎり 今日の出番を待っていた。湾の南端の沿岸から南東に 35キロも突き出した丘陵地にたたずむ彼の背後では 標高約546メートルのカルメル山が 頼もしげにたたずんでいた。この場所は古くから、神聖な場…