申し訳ございませんが、 あなた様に差し上げるパンはありません。 彼女はゆっくりと振り向き、少しうつむき加減に身をかがめながら言った。 埃まみれの旅人はそれでも穏やかに彼女を見つめていた。 その男は、ザレパテ村の門の入り口で彼女を呼び止めて言ったのだ。長らく旅を続けてきて、喉が乾いて困っています。水を一杯いただけませんか?「水」 それは今、貴重なものだった。 雨が降らないのだ。 しかしここは豊かな水源が背後にあって、湧き出る水は枯れなかった。 旅人をもてなすことは、幼い時から言われていたことだし、彼女は気軽にそれに応じた。 ところが彼女が水を取りに行こうと 旅人に背を向けた時、その人の言葉が追っ…