イゼベルは鏡の中の自分に見入っていた。 年月を重ねたけど、それなりに落ち着きのある美しさが身についていると思った。体形は輿入れした当時と然して変わらず、目の輝きも衰えていない。 髪飾りが、綺麗にまとめ上げられた髪につけられた。彼女は満足そうに口角を上げると、侍女たちはため息をついた。「イゼべル様、その笑顔はどんな宝石よりも美しいですわ」彼女たちは輿入れのおりに、国元から連れてきた気心の知れた女たちだった。イゼベルは右端の口角をさらに引き上げて、にこやかに立ち上がった。 そろそろ、夫が帰ってきてもいいころだ。鏡の中の彼女はくるりと廻って、最後の確認をした。 完璧だ。政略結婚とはいえ、日々の暮らし…