「イスラエルの連合軍があたふたとモアブから去ってゆく」石工たちはメシャ王の命じたままに、高さ1.2メートル、幅60センチ、厚さ35センチの、黒く光る立派な玄武岩の表面にその文字を刻み付けていった。今回の戦のきっかけは、父の代から続くイスラエルへの貢物を拒んだことからだった。小羊10万頭と、雄羊の毛10万頭分。重荷だった。貢物を納めるたびに屈辱の憂き目を味わうのだ。機会があればと隙を伺っていた。そこに、 朗報が入ったのだ。チャンス到来。イスラエルの王アハブが亡くなった。送り出すばかりになっていた10万頭の小羊は放牧され、10万頭の雄羊の毛は倉庫に戻された。それから何度かイスラエルから貢物の催促が…