機関誌『雲』8号(兼『罪と罰』パンフレット) もしもあの日、あの時刻、有楽町駅のホームに立ってさえいなければ……。 生意気にも洋画ロードショウに小遣いを注込むことを覚えた高校一年生は、日曜の午前十時上映の第一回を、おそらくはパンテオン劇場で観た。幾度もかよったロードショウ館だ。その日なにを観たかは、記憶にない。 帰路、有楽町駅のホームで、電車を待っていた。眼の前に、そごう百貨店。屋上から地上へ向けて垂れ幕が下り、でかでかと「罪と罰」の文字。やゝ小さく、ドストエフスキーとも劇団雲とも。夏休みに、青息吐息で読み了えたばかりだった。映画ではなく、芝居が実演されるらしい。 読売ホールだって? ふぅん、…