この本の帯に「世界の見え方が180度変わる」とあるが、確かに高度資本主義社会に過適応して暮らしている私たちにとっては、思いも及ばない世界が展開されているのだった。 この本はボルネオに暮らすプナン族の奥野克巳によるレポートなのだが、現在の世界に原始共産制のような社会が存在していることが、まず奇跡なのだ。 狩猟採集民のプナンには、私的所有という概念が存在しない。当然、私たちとは自我のありようも違う。近代的自我を形成してしまった私たちは、私有財産を当然のものとして資本主義社会に暮らしていて、個と個の関係は、それぞれの権利がぶつかりあうため、常に緊張しているように思う。ところがプナンの社会では個と個の…