歌舞伎界に新しいスター役者が誕生した。他でもない、高麗屋の御曹司・染五郎である。今月の歌舞伎座は三部ともいい入りだったが、その中でも筆者が観劇した日に限る話しではあるが、この二部が最もいい入りだった。今年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』において、木曽義仲の長男義高を演じて満天下にその美少年ぶりをアピールした染五郎が、弱冠十七歳にして歌舞伎座の主役に抜擢された。 幕開きはその『信康』。染五郎の信康、鴈治郎の康忠、錦之助の親吉、魁春の築山殿、高麗蔵の重次、莟玉の徳姫、坂東亀蔵の忠佐、錦吾の忠次、桂三の山城守、友右衛門の忠世、白鸚の家康と云う配役。上演は今回で三度目であり、前回は二十六年前に海老蔵がま…