深沢七郎が『いのちのともしび』(昭和38年)でこう書いている。 六月の末頃、札幌の街はいちごの出盛りである。旅路の果、私は札幌で、このいちごを見て<アレッ!>と目を見はった。東京では、いちごは小箱に並べてつめて売っているのだが、ここでは八百屋の店先に山のように盛り上げて、土いじりのスコップですくって、投げるように新聞紙の袋に入れて売っているのだ。出はじめは100グラム五〇円ぐらいだそうだが、今、出盛りで一キロ四十円なのだ。 写真は小樽商科大学で英語を教えたスミス(Wallace Smith)先生が撮ったものだが、赴任が昭和38年なので深沢七郎と同じ頃だと言える。小樽の八百屋あるいは青果店だが、…