小川糸『卵を買いに』を読みました。 エッセイを読むとき、私は他人の考えを借りる気持ちで読む。知らない場所、知らない食べ物、知らない景色、考えても見なかったこと、他人の考え。エッセイを読むことで多少なりともインプットできたと思う。 他の人の考えていることが全然分からない。ずっとそう思って生きてきた。今もその傾向は変わらず、他人の表情や口調、仕草でその人の考えていることを推し量ろうとはしても、決して言葉にならない限り断定しないようにして生きてきた(できているかは別だが)。いや、言葉ですらその人が本当に思っていることとは限らない。 エッセイでは、小説とは別の方法で書き手に近づくことができる。でも近づ…