いつもみなさん、ありがとうございます。 さて今回は法華経方便品における「正直捨方便」の一節についてです。 結論から申し上げますと、実はこの「正直捨方便」という言葉はサンスクリット原典に対応する言葉が存在せず、鳩摩羅什による加筆・改竄の可能性が高いと私は考えています。 まず法華経方便品で、鳩摩羅什漢訳版の当該部分と、サンスクリット原典の当該部分を対照してみましょう。以下の画像は坂本幸男・岩本裕訳『法華経(上)』(岩波文庫、1962年)の128ページ(鳩摩羅什漢訳)と129ページ(サンスクリット原典訳)になります。 ご覧になられてわかるように「正直捨方便」にあたる言葉はサンスクリット原典の法華経に…