『中国料理の世界史』が出た2021年に、比較的高額の食文化本が多く出た。特になにかのきっかけはないだろうが、出版界ではいわゆる「お料理本」が多いなか、食文化を視野に入れた本が多く出た。 その最高峰に『味の台湾』(焦桐、川浩二訳、みすず書房、2021年)がある。著者の焦桐(ジアオ・トン)は、1956年生まれの台湾人。詩人、編集者。翻訳をした川浩二(かわ・こうじ)は、1976年生まれの立教大学外国語教育研究センター講師。専門は、中国近世の文学。 この本の内容を簡単に説明すれば、著者の食べ歩きの思い出話なのであるが、日本にも多くある「小説家の食味エッセイ」とはだいぶ違う。高級料理店の山海の珍味は出て…