85話 いよいよ博覧会当日になりました。 国王の行列は、 大勢の群衆の間を通り、 博覧会の展示場へ向かいました。 大通りと広場を埋め尽くした 人々の歓呼の声が 天と地を揺るがすようでした。 エルナはその勢いに圧倒され、 屋根のない馬車の手すりの 向こうを見ました。 結婚式の日のパレードで見た人波も めまいがするほどでしたが、 今日集まった人数は、 その数倍になりそうでした。 馬車と歩調を合わせて 行進する騎馬隊や 街に掲げられた万国旗、 晴れた春の空を見回していた エルナの視線は、 隣に座っている夫の顔の上で 止まりました。 彼は、まるで軽い散歩でも 楽しむために出てきた人のように 平然として…