神出鬼没園田探偵(第一編):森田芝村 1913年(大2年)弘学館刊。 作者の森田芝村(しそん)については生没年不明。明治末期から大正にかけて「美文的模範書翰」などの文章読本の著者だった記録がある。伊藤秀雄の『明治の探偵小説』でも、探偵小説の黎明期のフリーマンの「ソーンダイク博士」を翻案紹介した三津木春影と同時期に、その科学的・実証的捜査手法を日本の探偵小説に取り入れたと記載している。大阪近辺を舞台とし、警察本部特別探偵・医学士という地位での園田林之助の活躍を淡々とした筆致で書いている。この時期の作品は事件のプロットもひねった物は少なく、地道な捜査で解決を見出すという簡明さが心安い。☆ 神出鬼没…