2022年の年末に、ある出版社を退職した。直後から同じ業界で再就職先を探すが、不採用が続く期間を半年以上経験した。出版社に辿り着く為に数回の転職を経た私だったが、昨年の顛末に次ぎ、届き続ける不採用の通知が、この業界からの退場を勧告されているように思えて、徐々に自分の“適正”を疑うようになっていた。指針も蓄えも失いかけていた今年4月。それでも本の在る環境に身を置きたいと、私は縋るように、かつての営業先であった増田書店で働かせてもらうようになった。日々、店頭で本を求める人たち。そこには、出版社の企画会議で創り上げる架空の読者像では想定し得ないような動機と目的があって、私は初めて個の顔と名前として“…