大岡政談に「子争い」という話があります。誰もが一度は聞いたことがあると思われる有名な話で、筆者も小学生のころに少年雑誌で読んだ覚えがあります。こどもごころにも「なるほど」と感心したものです。 それは二人の母親が一人の子を自分の子だと言い争って町奉行所に訴え出た話でした。そこで大岡越前守は二人にその子を両側から取り合うよう命じました。奪い合いをして勝った方が、その子の母親とするというのです。それで二人は互いに引っ張り合いましたが、子どもはたまりません。「痛い痛い」と言う声を聞いて、片方の母親は思わず手を離してしまい、もう一人の母親の勝ちとなってしまいます。しかし、大岡越前守は勝った母親ではなく、…