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妄想実験

(読書)
もうそうじっけん

思想や特に哲学の諸領域に於いては、それらの方法論として「思考実験」が用いられることが度々ある。…これは大体の自然科学に於いて物理的実験が可能であることとの対照(コントラスト)に於いて、そもそも思弁を事とする諸領域では、原理的に物的な実験という方法を採ることが不可能であるという原事実に由来するに違いないのである。
ところで作家;評論家;批評家などとしても知られる埴谷雄高は、その生涯で唯一の、しかも畢生の長篇小説であるところの『死霊』の昭和23年初出の真善美社版序文(現在これは、講談社版と河出書房新社版の両方に収録されている。)に於いて、「思考実験」であるどころか「妄想実験」こそがこの作品で追窮されるであろう旨を予め記している。…これは、この小説が思考実験を逞しくする思想や哲学の諸領域を踏まえながらも、尚且つそれらをすら超え出て「妄想」の――彼に特有の用語法としての――「架空凝視」の領域にまで敢然と踏み込むことをさえ企図していることに相応して名付けられた或る事態、とでも言い表されえよう。

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