ここ数年に書かれたものかと錯覚する。 「想像力と状況」 新装版 大江健三郎同時代論集3 岩波書店 まったくもって現在のことを考察し論評しているのではないか、と思ってしまう著述は、実は意外と結構あるものだ。 とくに、戦前戦中戦後に書かれたものが、まるで今についての論考であるかのように感じる。いや、古代に書かれたものでも、例えばプラトンを読んでいて、昔から人や社会は変わっていないのだな、と思ったりしたことのある人は多いだろう。 いや、だからこそ、かつての偉人たちの悩みや書き残してくれたものは、現在の人間たちの生きるヒントになるわけである。 もちろん時代背景は確実に変わる。最も変化しているのは、いわ…