外相の奇病:神秘探偵、永代静雄 1919年(大8)実業之日本社刊。 永代静雄(ながよ・しずお、1886~1944)は作家としてよりも、明治文学史研究における田山花袋の『蒲団』の登場人物のモデルの一人として注目され、その生涯が「微に入り細に入り」詮索され続けた人だと言えよう。(これには文学研究そのものの閉塞性さえ感じる。)彼は文壇の作家たちとの交友もあり、新聞記者、評論家、西洋史家、翻訳家、小説家と幅の広い文筆活動をしたようだが、探偵小説や文芸作品がありながらも、ほとんどそれに言及されることがないのは不思議でもある。 それは事件の描かれ方が超自然的だからかもしれない。表面的には、外相がたびたび原…