1901年(明34)滝川書店刊。松林伯知は泥棒伯円と称された名人松林伯円の弟子で、明治後半から昭和初頭まで講談師として活躍した。高座での口演の外に速記本での出版物も師匠の伯円に匹敵するほど多かった。伝統的な剣豪・合戦物から文明開化後の近代物まで幅広く取り上げた。この「美人の油絵」も明治時代に急速に人気を高めた京都在住の洋画家と、その伴侶の座を争う2人の美女、および粗忽者の弟子や粗暴な書生が入り乱れる犯罪と怪談との一大話が語られる。伯知に圧倒されるのはその話量の多さと豊かさであろう。小説家たちが筆をなめて一心に書き綴るよりも素速く、口から次々と朗々と繰り出される言葉には感服させられる。☆☆☆ 国…