鴨長明は『無名抄』 「66 俊成卿女・宮内卿、両人歌の詠みやうの変はること」 に続いて、宮内卿の兄源具親(※1)について、共に和歌所寄人に任命された寂蓮の辛辣な評価を引用して次のように記している。 「67 具親、歌を心に入れざること」 寂蓮入道はことにことにこのことをいみじがりて、兄人(せうと)の具親少将兵衛佐の、歌に心を入れぬをぞ憎み侍りし。 「何ゆゑ身を立てたる人なれば、しかあるらむ。宿直(とのゐ)所をまれまれ立ち入りてみれば、晴の御会(ごくわい)などのある頃も、『弓よ、蟇目(※2)よ』など取り込みて、細工前に据ゑて、歌を大事とも思はぬ」とて、くちをしきことにぞいひ侍りし。 【寂蓮入道は、…