電車の遅延や寄り道のわりには、明るいうちに実家に到着した。タクシーを降りると、庭先で弟が出迎えてくれた。 「ただいま」と居間に入るやいなや「思ったより早く着いたね」「顔見たかったからうれしいよ」「指折り数えて待つのもいいけど、こうやってすぐに会えるのもいいね」などと矢継ぎ早に言って歓待してくれた。病み上がりの母が思ったより元気そうで安心する。 時間どおりに出前が来て、みんなで食卓を囲んだ。父は無口なのでこの先もあまり登場しないと思うが、わたしの隣で寿司をつまんでいる。何年か前には入院先で「今夜が山です」と言われ生死の境をさまよった。それを思うと、いまこうして一緒に食事できるのは有り難いかぎりで…