ジョン・ケージによれば、定義は、「結果が予知できない行為」。少し言い換えると、その定義は、「(作曲家でさえ)結果が予測出来ない音楽」となる。したがって、ヘンテコな音楽だから「実験音楽」というわけではない。サイレンスと実験音楽―ケージとその後が基本文献。作曲家は、音響結果を構築するのではなく、音響を産出するシステムのようなもの(プロセス)の設計に従事し、また、そこでは音はa time-object(時間的な対象物 )ではなく、生まれては消えていくprocessのようになる、とされるため、プロセス音楽とも呼ばれる。そうした作曲家でさえ「予見できない状況」としての音響結果の意外さ等々を楽しめるか否かで、実験音楽を楽しめるか否かは分かれる。
狭く考えれば、50年代初頭から70年代前半までのそうした音楽に限定される。それらの実験音楽を「ポップ」にしたものが、80年代以降のニュー・ヨーク・アンダーグラウンドの様々な動向であると考えることが出来る。歴史的には、プラグマティズムやトランシェンデンタリズムの影響が強く、また、WWII以降の世界情勢の影響(ヨーロッパからの亡命者たちが戦後アメリカ現代芸術に大きな影響を与えた。)が強いので、一種の、アメリカ的な民族音楽として位置づけることも可能。