折れた相思樹:富澤有為男 1950年(昭25)1月~1952年(昭27)6月 雑誌「富士」連載。2年半、30カ月に及ぶ。 1952年 講談社刊。(傑作長編小説全集第21巻所収) 富澤有為男(ういお)(1902~1952) は作家であると共に帝展に入選するほどの実力のある画家でもあった。戦前期(1937)に芥川賞を受賞していたが、作家としての現在の知名度はなぜか低い。寡作であったのと中央文壇からは隔絶して暮らしたからかもしれない。 この作品は戦中から戦後にかけての若い画学生と南西諸島で育った少女との心と心の絆の深さを描いた感動作だった。写生に訪れた島で二人の心の交流が始まるが、単なる恋愛に発展す…