壬寅年十二月初五。気温摂氏▲2.7/11.8度。快晴。 小玉祥子『完本 中村吉右衛門』(朝日新聞出版)読む。確かこの著者で「二代目聞き語り」がご本人が記者をする毎日新聞社から出てゐたと思ふが、それを膨らませて朝日新聞から「完本」とは。播磨やの得意とした演目に対する芸談が面白い。播磨やの、その姿が脳裏に浮かぶ。それがもう拝見できないと思ふとつらい気持ちばかり。もう本当に二度と出てくることのない伝統歌舞伎の役者。夫人やお弟子筋のコメントもいくつも出てくるが何よりも竹本の葵太夫のいくつものコメントが実にじんと心に沁みる。葵太夫さんにとつて播磨やとの舞台は本当に格別なもの。その最期の映像記録が〈須磨浦…