見る人が見れば奇妙に映ったことだろう。 三十人近い学生たちが互いを讃えて沸き立つ中で、僕だけがどこか澄ました顔をしていたからだ。 我がサークルのバンドは一年毎と決まっている。 つまり、今年最後にあたる今夜のライブの終わりは、そのまま全てのバンドの解散を意味していた。 これで引退や脱退をする者もいる。 一年近く苦楽を共にしてきた以上、皆がこのように感極まるのも当然といえば当然であった。 僕は少し前から、自分のバンドパフォーマンスに限界を感じていた。 そして、己が本物のエンターテイナーであるならば、己の最高が出せなくなる前に舞台から去るべきであると考えていた。 そして、今夜、最後と決めたライブを無…