🌺【源氏物語 19 第2帖 箒木〈ははきぎ〉】 「その時分にまたもう一人の情人がありましてね、 身分もそれは少しいいし、 才女らしく歌を詠《よ》んだり、 達者に手紙を書いたりしますし、 音楽のほうも相当なものだったようです。 感じの悪い容貌《きりょう》でもありませんでしたから、 やきもち焼きのほうを世話女房にして置いて、 そこへはおりおり通って行ったころにはおもしろい相手でしたよ。 あの女が亡くなりましたあとでは、 いくら今さら愛惜しても死んだものはしかたがなくて、 たびたびもう一人の女の所へ行くようになりますと、 なんだか体裁屋で、風流女を標榜している点が気に入らなくて、 一生の妻にしてもよ…