映画にはオムニバスと呼ばれる方式がある。辞書には「それぞれに独立したいくつかの短編をまとめ、全体として一貫した作品にした映画」(『日本語大辞典』講談社)と説明されている。本書の読後印象は、短編小説をオムニバス方式で構成したものといえるように思う。 本書のタイトルにテーマの一極が表出されているが、この短編集は、天下人(てんかびと)が求めた茶の道具性と千利休が目指した茶の精神の美の相剋というテーマが一貫している中で、様々な切り口から短編小説が織りなされている。 このオムニバスの中で千利休が直接に語る、あるいは利休に関連して語られる場面からテーマに関わる箇所として私が着目したものをまず抽出しておきた…